- 作者: 紫式部,瀬戸内寂聴
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/07/14
- メディア: 文庫
- 購入: 3人 クリック: 4回
- この商品を含むブログ (10件) を見る
「御法」の帖で副主人公ともいうべき紫の上の死が語られている。最愛の紫の上の死を見送った後一年ばかり経って源氏は出家し、その後、二、三年嵯峨に隠棲の後に、死んだらしいということになっている。従って、源氏一代の物語は、「雲隠」という幕が降りて終ったことになる。
紫の上について
晩年出家に憧れながら、源氏と共に暮しているため、いつでも源氏に反対され出家を遂げることが出来なかった。源氏物語の女たちの中で最も幸福な女と言われてきた紫の上を、私は最も可哀そうな女と思われてならない。
少なくともこの物語の中の女たちは、出家することによって、源氏の愛欲によってもたらされる激しい苦悩を脱し、心の平安を得ているからである。
紫の上は、たしかに光源氏の半身であった。目に余るほどの源氏の生涯の色恋沙汰も、紫の上という愛の中心の女神がいてこその、浮気であったと見られる。紫の上の死後の源氏は精神の張りも失い、生きる目的すら見失ったようで、昔日の輝かしい俤を見る見る失っていく。
感想
遂に一つの物語が終わってしまったなあ。「ローマ人の物語」とは違い、落ちていく期間は短く、さっぱりと終われたのは良かったかな。読む側としても、そんなのを延々続けられるのは辛いからな。まあ、ローマ人のほうは史実だから仕方ないんだけど。編集でカットできるわけでもないんだから。
話はちょっと遡って、源氏の君が「女を愛して執着するのはいかにもみっともないことだと、昔からよくわかっていたから、どんな関係の女についても、すべてこの世に執着心が残ることがないようにと心がけてきた。」って言う場面がある。
これを聞いて、よく言うよ、と思ったけどね。お前、さんざん女に執着してきたじゃないか、と。むしろそれこそが源氏の生涯の中心じゃないか、と。源氏物語の面白さも、そこから生れてきているわけだし。本人からすれば、これでも抑えてきたほうなんだろうね。自分自身のことは冷静には見れないもの。まあ確かに、現実はそういうものかも。残念ながら。
今までの中心人物がいなくなり、ぽっかりと穴が空いたよう。でもまだ続くみたいだけどね。今まで以上のどんな話を持ってくるのか、続きに期待していくとしよう。