- 作者: 西條勉
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/02/25
- メディア: 単行本
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イザナキ・イザナミの話は、一口で国土創成神話と呼ばれている。これらの話の特色は、伝承的な来歴をまったくもたないことだ。民間に伝えられていた古い話は、おそらく一つもない。おおかたのストーリーは、朝廷の知識人たちが机上で作った。ただ、イザナキとイザナミという神名だけは存在した。イザナキ・イザナミは、新しい日本にかなう世界創成の神として、選び出された真新しい神である。
古事記は「天照大御神」とするが、これはいわば美称だ。伊勢神宮では、今でも「天照意保比流売」という。実態は「ヒルメ」であり、原像は神を祭る巫女だった。それが、祭られる神そのものになったとき、性別を超えたアマテラス大神が誕生する。この変身を可能にするのが、天の岩屋戸神話だった。
感想
日本の神話、第四弾。本屋で新しい解読本を見つけたので読んでみた。
日本神話は、天武天皇が自身の権威の正当性を示すために編纂を命じたものであり、色々と脚色・創作されているってのは知っていた。この本では、その神話がどのように作り出されていったのか、詳しく解説している。日本神話は、「歴史は勝者によって形作られる」っていうのを如実に表している。古事記・日本書紀が日本国の正史ってことになっているけれど、その裏にたくさんの「本当の」話も葬ってきたんだろうな。その断片を拾い上げて説明してくれており、すごく面白く読むことが出来た。また一つ、日本神話について詳しくなれて嬉しい。
でも、歴史改編の試みは現在も存在する。日本の敗戦により広まった自虐史観なんかもそうだよな。色々と反論を掲げている人もいるし、正しい理解に至る人も多い。今は情報化の時代なんで、昔のように葬られることなく、今後も残ってくれるのかもしれない。ただ、100年200年経った時、常識として残っているのはどういう情報なのか。しっかりと語り継いでいきたいよな。