- 作者: 岩井克人
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2005/06/25
- メディア: 単行本
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糸井重里「動機が見えるかどうかが、何かを読む時の大事な部分だと、ぼくはおもっているんです。」
人間は、「言葉」と「法律」と「おカネ」を使うからサルとは違うんです。つまり、言葉も法律もおカネも遺伝子には入っていない。言葉、法律、貨幣も、人間と人間をつなぐ「媒介」です。それがなければ、人間は人間ではない。まさに人間のアイデンティティに関わるものが、遺伝や物理的な存在ではない・・・。こういう不思議なものが、世の中にいくつかある、というおもしろさに、ある時、気がついたんです。
人間に文学があるのは、「言葉ってウソをつけるから」ですよね。現実にないものを、指し示すこともできるから。言葉が、信号のように、ひとつの意味を示すだけのものなら、ほんとうに単純な社会になっているわけでして。ですから、人間の社会をおもしろくしているのはウソもつける「媒介」があることで・・・。「人間である」ということは、そういう存在であらざるをえないと思うんです。
法律や貨幣も、言語のように「ウソをつく」というか、そういうものであるからこそ、「その上に成り立っている人間社会の動きを予測するのが不可能」になってしまうのです。
感想
会社の研修の副読本として提示された本。2005年の、ライブドアによるニッポン放送株買収事件が起こったあたりに発売されたもので、その後の結末はまだ分かっていない時期だな。なんで今更そんな古い本を、と思ったが。「ポスト産業資本主義の時代はおカネよりもヒトが大事」って話も、ドラッカーさんが言ってたことで、特に目新しいものではなかったし。
「金融革命が起きたのは、おカネの力が弱くなったから」って意見は「なるほど」と思った。その後、リーマンショックとか欧州の金融不安とか、色々起こってるからな。金融革命の熱が冷めたところで、改めて本当の企業価値とは何か・企業経営とは何かってことを考えていこうってことなのかな。
僕にとってはそれよりも、後半の対談部分の、糸井さんとの話のところのほうが面白かった。著者は、「世の中を知りたい」という強い気持ちを持っていて、それを経済学の分野から見ていっているそうだ。確かに、人間の作った仕組みを調べることにより、人について分かることってあるだろうな。そういう方面から経済を見ていくのも面白そう。僕も「世の中を知りたい」って気持ちを持っているし。経済からのアプローチに限らず、色々な方面から解き明かしていきたい。