- 作者: 中西輝政
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2006/10/01
- メディア: 新書
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戦後の日本に起こった、あるいは今日のアジア諸国に見られるような急激な高度経済成長には、憲法や占領政策とは無関係の、大きな要因があるのです。これは「文明史的範疇」の話なのです。そこを外して、日本に特有の戦後的な事柄だけで説明しようとするから、ごく短期的な視野に陥り、破綻するのです。
戦後の社会主義的理想主義が「大いなる嘘」を孕んでいたことは、これまで見てきたとおり、疑う余地はありません。けれども、それを乗り越え本当の理想とは何か、それをつかまえようと格闘するのではなく、日本人の美徳である「素直な真面目さ」までも否定する方向に走ってしまうのです。その結果、確固たる国家観も人生観もないまま、ただ世の流れに掉さしてその日を生きるだけの「漂流する日本人」を大量につくり出してしまった。
どんな出来事も最低、60年くらい経たなければ本当の意味で「歴史」にはならない。戦争や革命といった世界を揺るがす出来事になればなるほど、これは当てはまります。
感想
本屋で見つけ、タイトルに関心を持ったので読んでみた。新書ということでページ数は少ないながら、どの部分も興味深かった。確かに、「これだけは知っておきたい」っていう厳選部分なんだろうな。ここからどんどん広げていきたいと思った。とはいえ、ここで述べられていたことは、小林よしのりさんの著作を読んで知っていたことも多いんだけど。補強にもなったし、主張が対立する部分では、自分の考えを深めることもできた。
戦前戦後に蔓延っていた共産主義について。色んな思惑が絡み、スパイの暗躍もあったりと、大変な過去があったんだなあ。共産主義・社会主義の失敗が明らかになった今から見れば、的確な判断を下すことができる。でもその当時、共産主義の考え方が、命を賭けるべき理想と映ったって仕方ないよな。本当、それが日本に根づかなくて良かったよ。
全ての情報が開示された状態で判断を下せることなんてあり得ない。隠された真実・情報があることを踏まえて決定していかなければ。そう考えると、極端な決定・行動に走るべきではないよな。他の可能性を考えずに突き進むのは純粋に見えて、単に思考を放棄した逃げに過ぎない。そんな人間に、先頭に立つ、扇動する資格はない。口を出すだけで満足してろ、って話。
大東亜戦争についての判断なんかも典型的。著者が言うように、中国共産党が崩壊し、歴史の真実を語る隠された史料が出てくるときが楽しみだよ。その時になって考えを改めたって、それまでに踏みにじられたものは戻らない。今安易な判断をしている者は、後にそれが自分に返ってくることを思いに留めるべき。まあ、そういう人間は、仕方なかった、なんて言ってまた逃げるんだろうけどさ。逃げて済めばいいけど、こちらにまで影響を及ぼすなよな。
自衛隊・軍隊についての判断も、極端に走るべきではない。核を持つことについてはちょっとどうかと思う僕も、軍事力は持って当然だと思う。いかに戦略を持たない日本とはいえ、それとは話が別だろう。核兵器についてもねえ。絶対に抜かない宝刀なのであれば、戦略なんて要らないのかも?なんて、そういうものでもないか。
天皇制について。改めて、これは日本が誇るべき伝統だと思うし、大事にしていきたい。継承問題についてもね。本当に守るべきところ、維持すべきところってのを考えないといけない。全てが全て、守るべき伝統にしてしまうと、制度は硬直化してしまう。本質を見失ってしまう。外国の例なんてどうでもいいし、振り返るべき過去は大日本帝国憲法まで、ってわけでもない。全ての前提を取り払い、一から考えられるといいよな。それが男系にあるというのなら、全力で死守すべきだろう。でも現状、どちらかに凝り固まるつもりはない。
多数出版されている日本人論についての本を読んでいくのは面白そう。この本で批判されていた「菊と刀」も、有名な本ではあるけれど読んだことがないんだよな。自分自身の立ち位置を固めるためにも、それらの本の主張を知るのはいいことだろう。