40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

日本人のための憲法原論

日本人のための憲法原論

日本人のための憲法原論

憲法も民主主義も、けっして「人類普遍の原理」などではありません。これら2つは近代欧米社会という特殊な環境があって、はじめて誕生したものですから、憲法を知るには、欧米社会の歴史と、その根本にあるキリスト教の理解が不可欠なのです。


刑法は裁判官を縛るためのものです。刑法を破ることができるのは、裁判官だけ。刑を与えることができるのは裁判官なのですから、したがって刑法とは裁判官に対する命令である、裁判官を縛るためのものであるという結論になる。
刑事裁判では検察側に1点でも落ち度があれば、ただちにアウトです。検察は負け、被告が勝つ。鵜の目鷹の目で検察側の落ち度がないかを調べるのが、裁判官の本来の仕事です。つまり、裁判官というのは、あたかも中立で公平な存在のように思われているけれども、本質的には被告の味方であって、検事の敵なのです。


憲法とは国民に向けて書かれたものではない。誰のために書かれたものかといえば、国家権力すべてを縛るために書かれたものです。司法、行政、立法・・・これらの権力に対する命令が、憲法に書かれている。国家権力というのは、恐ろしい力を持っている。警察だって軍隊だって動かすことができる。そんな怪物のようなものを縛るための、最強の鎖が憲法というわけです。


自由も平等も、その前提になっているのは権力との戦いです。そのプロセスを抜きにして、いきなり自由や平等を与えるとどのような結果になるか。
権力と戦うことなく人権を手に入れたものだから、戦後の日本人は権力を監視することも忘れてしまった。その結果が、官僚の独裁であることは言うまでもありませんが、民主主義とは国家権力との戦いなのだということが忘れられると、自由も平等もたちまちにして変質してしまうのです。



感想
かなり面白い本だった!これは、「乗り移り人生相談」の島地さんが編集をした本。連載で何度か言及されていたことがあって、読んでみたかったんだよな。


欧米社会の成り立ちについて、日本の近代化について等、今まで知らなかったことが知れたし、これまでとは違う角度から体系立てた知識を得ることができた。
また、安倍内閣が発足し、憲法改正論議も盛り上がっているし、タイムリーな読書にもなった。憲法改正の是非を考える前に、この本を読んでとりあえずの土台を作っておくのも有益だと思う。まあ、それが実現するかどうかは分からないけどね。


「裁判で裁かれるのは、検察官」だというのは知らなかった。憲法も国家権力を縛るもの。その他、国家に対する見方が欧米と日本とでは異なる。こういう違いは面白いなあ。やっぱり、根本の思想のところまで立ち入らないと、表面に出ている違いは理解できないよね。効果的な対策を講じることも出来ない。安易な答え・解決を求めるのでなく、深いところからの理解を追及していきたい。


この本の中で、日本の憲法は死んだと説く。田中角栄ロッキード事件の裁判において、裁判所は憲法違反を行った、と。マスコミ・国民の「角栄憎し」の風潮に乗って。
同じような構図は、つい最近決着した小沢一郎の裁判においても見られた。そこできちんと無罪判決が出たってのは、まだぎりぎりのところで秩序は保たれたってことなのかな。マスコミも国民も、流されやすいのは変わらないからなあ。日本が戦争に突き進んだのだってそうだし。
そういった性向を踏まえ、是正するような上手い仕組みは無いものなのかねえ。いつ極端に走ることになるやら、怖すぎる。情報が駆け巡りやすくなった現代ではなおさら。情報化社会が、多様性を育むのか、画一性を助長するのか。実際のところ、どっちなんだろ。今のところは多様性を認めているようだけど、本当の危機においてこそ真実は明らかになるわけで。