40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

サピエンス全史 上

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

私たちの祖先は自然と調和して暮らしていたと主張する環境保護運動家を信じてはならない。産業革命のはるか以前に、ホモ・サピエンスはあらゆる生物のうちで、最も多くの動植物種を絶滅に追い込んだ記録を保持していた。


かつて学者たちは、農業革命は人類にとって大躍進だったと宣言していた。だが、この物語は夢想にすぎない。農業革命は、安楽に暮らせる新しい時代の到来を告げるにはほど遠く、農耕民は狩猟採集民よりも一般に困難で、満足度の低い生活を余儀なくされた。狩猟採集民は、もっと刺激的で多様な時代を送り、飢えや病気の危険が小さかった。人類は農業革命によって、手に入る食糧の総量をたしかに増やすことはできたが、食糧の増加は、より良い食生活や、より長い余暇には結びつかなかった。むしろ、人口爆発と飽食のエリート層の誕生につながった。平均的な農耕民は、平均的な狩猟採集民よりも苦労して働いたのに、見返りに得られる食べ物は劣っていた。
より楽な暮らしを求めたら、大きな苦難を呼び込んでしまった。それはこのとき限りのことではない。苦難は今日も起こる。


人々が、ごく個人的な欲望と思っているものさえ、たいていは想像上の秩序(ロマン主義国民主義、資本主義、人間至上主義の神話)によってプログラムされている。
ロマン主義は、人間としての自分の潜在能力を最大限発揮するには、できるかぎり多くの異なる経験をしなくてはならない、と私たちに命じる。自らの束縛を解いて多種多様な感情を味わい、さまざまな人間関係を試し、慣れ親しんだものとは異なるものを食べ、違う様式の音楽を鑑賞できるようにならなくてはならないのだ。これらすべてを一挙に行なうには、決まりきった日常生活から脱出して、お馴染みの状況を後にし、遠方の土地に旅するのが一番で、そうした土地では、他の人々の文化や匂い、味、規範を「経験」することができる。「新しい経験によって目を開かれ、人生が変わった」というロマン主義の神話を、私たちは何度となく耳にする。



感想
この本が凄い、ってのは色んなところで宣伝されていたので知ってたんだけど、タイミングが合わずにそのままになっていた。今年初め、定期的に読んでいるブログ「poohの毎日」で取り上げられた際に再度思い出し、ようやく予約するという行動を起こし、このたび遂に読むことができた。評判どおり、「銃・病原菌・鉄」を彷彿させる面白い読書になった。面白いと分かっているのに他にもやることが多くて手が付けられないってのは、本当にもったいないよね。アリリタした暁には、その辺の取りこぼしをどんどん回収していきたいもんだ。


農業革命については話は特に興味深い。本でも書かれていたけど、より良い生き方を目指していたはずなのに、逆の結果になるというのは起こりうること。独身であり、収入に伴って生活水準を上げるようなこともしていない僕ではあるけれど。フルタイムで働いているという現状が、既に罠に嵌りこんでいるとも言える。リスクとリターン、費用対効果を考慮した上での現状であり、納得してはいるけどね。ただ、安全マージンを取り過ぎることなく、その時が訪れたならば即決断し実行に移したい。


過去、農耕を選択しなかった狩猟採集民は淘汰されていった。現代において、主流の生き方を選択しない人が淘汰されることはない。まあ、子供を持たない道を選べば、次代では消えてるんだけど。そんなことは気にせず、選択が可能になった現代の幸運を喜び、好きなように生きていこう。


自分の欲望が、世の中に影響されてプログラムされたものだという話。これは確かにその通り。消費主義からはある程度自由になっている僕だけど、色々な経験をしたい・旅をしたいってのは僕の中でもかなり上位を占める欲望だからな。成長欲からは解放されているし、純粋に、それが楽しそうだから、という理由ではあるけれど。まあ、世の中の流れに完全に逆らえるものでもないし、そうしないと満足が得られないわけでもない。オンリーワンな自分なんかは目指していない。世の中の流れ・傾向を自覚しつつ、その上で判断して行動していきたい。