40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

ゲンロン0

ゲンロン0 観光客の哲学

ゲンロン0 観光客の哲学

観光は、知識の拡張というより、むしろ想像力の拡張と不可分のものである。


現代はけっしてナショナリズムの時代ではない。かといって単純にグローバリズムの時代でもない。現代では、ナショナリズムグローバリズムというふたつの秩序原理は、むしろ、政治と経済のふたつの領域にそれぞれ割り当てられ重なり共存している。ぼくはそれを二層構造の時代と名づけたいと思う。


(観光客は)出会うはずのないひとに出会い、行くはずのないところに行き、考えるはずのないことを考え、帝国(グローバリズム)の体制にふたたび偶然を導き入れ、集中した枝をもういちどつなぎかえ、優先的選択を誤配へと差し戻すことを企てる。


社会を変えたいと願う人間から、社会を変えるなんて偽善だと顔を赤らめて罵る人間へ、そして社会なんて変わっても変わらなくてもいいから好きなことをやればよいのだとうそぶく人間へ。ドストエフスキーの文学は、そのだれもが知る心理の弁証法を、どんな哲学書よりも緻密に描きだしている。
社会主義者から地下室人へ、そしてスタヴローギンへという歩みには、あともうひとつ、最後の段階があるはずなのだ。スタヴローギンのニヒリズムを超えた、その向こうに現れる最後の主体が。



感想
3/29にニコニコ生放送で、「ゲンロン0発刊記念!東浩紀が2500冊のサインをボヤきながら粛々とこなしていく無料動画」って番組があった。東さんに触れるのも前に読んだ本「弱いつながり」以来、2年半ぶり。ひたすらサインしていくだけの動画だったんだけど、ついつい見てしまった。今回発刊される本も、時間が経てば図書館で借りられるし、その時まで待てばいいんだけど。これもまあ何かの縁だし、サイン本ってのも面白いかなと思って、購入してみた。


そしてその後、4/11に行われた「ついに出た!『ゲンロン0』世界最速読書会!!」」って番組も視聴。1000円払って。せっかく買った本なんだし、そこから得られる体験はちゃんと回収しておこうと。まんまと作戦に嵌ってしまったかね。でも、そうしても良かったと思えるほど、面白い読書になった。


観光客としての生き方が、グローバリズムナショナリズムに分かたれた、並存する価値観を繋ぎ連帯させるものになると言う。それを聞いて、「なんでわざわざ連帯を目指さないといけないんだろう」とか思ってしまったわけだけど。個人の自由を求める「動物」のままで構わない、と。

でも第7章のドストエフスキー論の部分を読み、僕の今現在の立ち位置は、無関心・ニヒリズム的な第三段階なんだな、と。ドストエフスキーが描けなかった「カラマーゾフの兄弟」の続編にて、第四段階の主体について描かれていたのかも、なんて想像には、かなり関心をそそられた。

僕自身、今の自分が完成された状態だなんて思っていない。今までだって色々と思想は変遷しているんで、今後もそれが起きるのは想定内。それがどんなものになるのかには興味がある。


それが「子ども」と言われて白けてしまうのは、現段階では仕方のないところ。共感できないからこそ、今はここに留まっているんだろうから。後に繋ぐとか託すとかってのが、問題の先送りにしか思えない。自分の人生は、自分自身できっちり完結させろよ、と。

でも、そこを乗り越え、他者を、子供を求めるようになる未来が来ることも想定し、備えておくかね。消極的な理由ではなく、積極的に希望を持ってそういう状態になることを望む。


旅行は趣味の一つだし、カブを買って以来さらに頻度を上げて楽しんでいる。アリリタ後には、日本一周や世界一周もしようと考えている。それは観光客的に、見るだけ、つまみ食い、にしかならないかもしれない。でも、そこで世界の現状を知り、子供たちの生き様に触れることで得られるものもあるかもしれない。こちらの意図しない、偶然によって。それもまた面白そうだ。