あっかんべェ一休
- 作者: 坂口尚
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五山之上 南禅寺
京都五山 第一・相国寺(1401-1409年まで)、第二・天竜寺、第三・建仁寺、第四・東福寺、第五・万寿寺
これらの寺を叢林と呼び、寺の住職は幕府が決め、領地を与えられ厚く保護されていた。
鎌倉時代末期、京の土倉(金貸し)355軒のうち、85%が山門(比叡山延暦寺)僧侶。また日吉神社神官たちが営み、室町時代には五山禅宗寺院の進出が目立った。
「穢土のただ中に浄土のありか!凡夫に仏性!煩悩の中に悟りあり!悩みがなければ悟りもない。苦しみがなければ楽しみもありえない。哀しみがなければ喜びが何かもわからない!葉の裏表のように張りついている。一方を捨てさることなど出来はしない!これが生だ!これが生きるということだ!!」
「悟ってまた煩悩。煩悩してまた悟る!永遠の働きじゃ!!」
「人が平安を求めるのなら争いも受け入れねばならない。それは葉の裏表のように張りついている・・・。争いを無くしたいなら平安も求めぬことだ。平安という夢を・・・信仰を・・・!この世は夢と夢がぶつかり合っている・・・」
感想
仏教研究の第三弾。一休さんの話。アニメで、少年時代のトンチ話なんかは有名だけど、その生涯全体を網羅した本は初めて読んだので興味深かった。また、仏教についてはその全体像・大枠からしか追っていたなかったので、こうやって一人の人物に迫り、その思想や生きた時代についてピンポイントで深く知れたのも良かった。やっぱり、臨場感が違うよな。それに、これは本じゃなくてマンガだったので、よりイメージが湧きやすかったし。マンガだってことを知らなかったので、本を開いた時ちょっと驚いちゃったけど。
一休さんは天皇の子供で、出家し、後に大徳寺の住職になった。それだけ聞くと安定した人生だったかのように見えるけど、実際のところはそうではない。幕府庇護下の堕落した寺を抜け出して、あえて苦難の道を選び、世間の常識に囚われず、仏教の真理を追い求めた。肉食や遊女通いなんかも、制度や伝統に縛られない、自由な心ゆえに至った道なのかな。
個人的には、そういう破戒僧でも庶民の支持を得られるものなのかなあ、と。救いを求めるのなら、その助け手となる人物には高潔さとか徳なんかを求めるものなんじゃないのかな。まあ、当時の大寺は腐敗も進んでいたようだし、庶民と共に生きる一休さんの親しみやすさが受け入れられたのかもしれないな。形に囚われなかったとしても、真理を求める気持ちは本物だっただろうし。
寺の腐敗についても考えさせられるよな。民を安寧に導くはずの寺が、金貸しをして民を苦しめてるんだから。洪水・干ばつによる飢饉で大勢の人が亡くなっている中でも、上流階級との付き合いによって繁栄を誇っていた。もちろん、そういう生き様を批判する寺や僧もいたんだろうけどさ。
現代の人々がありがたがって拝んでいる神社仏閣においても、こういう裏や真実ってのはあるんだよな。まあ、それを踏まえても、そこに救いを求め、実際に救いを得ている人がいるのならば、存在する意味はあるってことなんだろう。正当性や真実なんて関係ない。それでいいんだと思う。
一休さんの、「人が平安を求めるのなら争いも受け入れねばならない。争いを無くしたいなら平安も求めぬことだ。」って言葉は、深いなあ。でも、本当にその通りだよな。正当性なんて結局エゴに過ぎない。万民が一つの考えで一致できるわけがないんだから。