- 作者: ケン・グリムウッド,杉山高之
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1990/07/27
- メディア: 文庫
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ただ一つ重要なことは、自分に残されている四半世紀ぐらいの年月は、自分の人生であり、自分の思う通りに生き抜くべきものであり、また、自分自身にとって最も為になるように生きるべきものだ。それ以外を優先させてはならない−仕事も、友情も、女性との関係も。それらはすべて人生の構成要素であって、価値あるものではあるが、人生を限定したり、コントロールしたりすべきものではない。自分の人生は自分の責任であり、自分だけのものだ。
可能性は無限だと、ジェフは知った。
感想
ループもの繋がりで読んでみた本。「七回死んだ男」を読み、僕が望んでいたことをそのまま展開してくれた物語。やっぱりこういう重厚なのが好みだな。
一回目のリプレイ。主人公は記憶を頼りに、賭けや株によってのし上がり、経済的な大成功を成し遂げる。僕も望んでいた展開ではあるんだけど、ひたすらその道に邁進し続けるってのはどうなのかねえ。二回目以降のリプレイでは、その儚さ・虚しさに思い至り、経済的成功は程々に留めるんだけど、僕としてはそんなの一回目から気付いておけよ、と思ってしまった。やっぱり男たるもの、どこまで行けるのか試してみたくなるのかねえ。僕だったら、費用対効果に見合わなくなった段階でさっさと降りるだろうな。幸福に繋がらない金を持っても意味がない。
二回目、三回目と、リプレイごとに異なった人生を歩んでいく。その差は劇的であり、人生に開かれている無限の分岐・可能性を思わせてくれる。ただ、一つ言わせてもらえば、一つのリプレイで一つの道しか進まない、ってのは単純に過ぎるんじゃないかなあ、と。長い人生、途中で気付くこともあるだろうし、その段階で方向転換していかないと。まあ、そんなことしちゃったら、リプレイを繰り返す意味がなくなってしまうんだろうけど。
主人公が最終的に辿り着く結論も、当たり前と言えば当たり前のもの。1度目の人生でも、気付く人は気付くもの、だろうね。僕もそう。まあ、多数の人生に裏打ちされた主人公の決意には及ばないものかもしれないけど。そうだとしても、自分の望む道を貫き、実現させたいものだ。結局、人には1つの人生しかないんだしね。
何だかんだ言ったけど、すごく面白い本だった。思考が刺激される読書はありがたいもの。またそんな本に出会いたい。