40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

民芸とは何か

なぜ特別な品物よりかえって普通の品物にかくも豊かな美が現れてくるか。それは一つに作る折の心の状態の差異によると云わねばなりません。前者の有想よりも後者の無想が、より清い境地にあるからです。意識よりも無心が、さらに深いものを含むからです。個性よりも伝統が、より大きな根底と云えるからです。華美よりも質素が、さらに慕わしい徳なのです。錯雑さよりも単純なものの方が、より誠実な姿なのです。華やかさよりも渋さの方が、さらに深い美となってきます。

ちょうど宗教の精髄が、複雑な神学に在るよりも無心な信仰に在るのと同じなのです。

 

今の人々はこぞって在銘のものを愛します。だがそれは「銘」を愛し、「人」を愛し、「極め」を愛しているのであって、美そのものを見つめているのではないのです。直観が彼等の判断の基礎ではないのです。

 

民芸品が特に注意されねばならない大事な理由の一つは民族性や国民性が一番率直にこの領域に現れてくるからです。民芸こそは国民生活の一番偽りなき反映なのです。もし民芸が衰頽するなら、やがて国家はその特質を喪失するに至るでしょう。

ごく当たり前なものが美しくならない限り、暮らしの向上はないのです。平易の中にこそ美が溢れねばなりません。ごく当たり前なものに美を盛ること、さらに当たり前なものでなくば示せない美を捕えることは、大きな仕事です。

 

 

感想

日本文化については深めていきたいと思っているし、ちょうどマンガ「へうげもの」を読んだり、著者の柳宗悦が「世界一の民陶」と絶賛した小鹿田焼の茶碗を買ったタイミングでもあり、とてもタイムリーな読書をすることができた。

へうげもの」の主人公・古田織部はマンガ内で茶碗をわざとぐにゃりと曲げた椀作りも進めており、そうした「作為」が否定されているのはちょっと笑ってしまったけど。

 

そうして提唱・推進することで、各地に細々と残っていた伝統工芸が生き残ったり、復活したりした功績は素晴らしいこと。今や民芸品も、一部は著者が批判した高級路線にいっているものもあるけど。焼き物なんかは数百円から買えるものもあるわけで、機械主義が極まり百均で器物が買えるような時代に、豊かな民芸文化が消滅せず生き残っているってのは凄い。生活の全てを民芸品で賄おうとまでは思っていないけど。少しでも多く生活が意味に、美に溢れるようにしていきたい。