眼の冒険−デザインの道具箱−
- 作者: 松田行正
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2005/04/27
- メディア: 単行本
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中世になるまでヨーロッパは鬱蒼とした森に囲まれ、農民にとって、森は神が棲まう神聖な場所だった。彼らが信奉していたのは多神教である。ところが人口が増加し、耕作地拡大のために森を切り開かなければならなくなった。それでも間に合わず、人々は都市に移住していった。そのとき彼らは、森の神々の憧憬を胸に抱きながら都市生活を始めていった。都市にもともと住んでいた民衆は、一神教であるキリスト教だ。そこに多神教の人々が流入してきたのだった。
そのころ、都市ではゴシック様式のキリスト教大聖堂などが建ち始めた。その天を突き刺さんばかりに尖って上を目指す形が、森から来た人々に懐かしい森のアナロジーを与えた。このアナロジーは、異教の神を駆逐したがっていたキリスト教会にとって、渡りに船だった。教会堂はどんどん鬱蒼とした森のように林立していくこととなった。そして、森のアナロジーを文字にまで応用したのが、このゴシック体である。つまり、人民教化作戦のひとつだったのである。
感想
デザインに関する本。デザインにものすごく興味がある、というわけではないので、これは自分を広げるための読書の一環。確かに、今まで使ったことのない頭の部分を刺激しているような感じだった。たまに読む分には新鮮でいいけど、何冊も続けて読もうという気にはならないな。
でも、興味深い部分もあった。上記の話とか。これがもし本当ならば面白い話だなあ。他には「!」とか「?」とかの文字がどうやって使われるようになったのか?など。ギリシャ語に使われる疑問符「;」が変形して「?」になったとか、ラテン語の「勝利」を意味する「IO」が縦に並んで「!」になった、とかの説があるらしい。今日読んだ日経新聞には、「猫の尻尾とお尻の穴」が由来という説が紹介されていたし、色々と諸説あるみたいだけど。
でもまあ、たまにこういう本を読むのも面白いなあ。「新しいことに取り組んでいる自分に満足している」という面もあるんだけど。