街場のアメリカ論
- 作者: 内田樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/05/07
- メディア: 文庫
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私たちが「伝統」とか「固有の」とか思っているもののかなりの部分は伝統的でもオリジナルでもなく、ちょっと前にどこかから入ってきたものです。その歴史的経緯を忘れてか、知らないふりしてか、社会集団の純血性とか文化のオリジナリティとかを言い立てるのは、あまり品のいいことではないように思います。
これは、そんなに厳密に考えなくちゃいけないものなのかなあ。日本は、他国から取り入れたものを進化発展させる能力を持っている。そうして磨き上げたものは既に原形からかけ離れたものとなっているわけで、「日本独自のもの」として誇ったっていいと思うんだけどな。この世にオリジナルのものなんてそう多くはない。というより、全ては過去を土台にして組み合わせや転用によって広がり、発展していったもの。ならば、オリジナルがどこかなんてどうでもよくて、それぞれの国や人々が、ある対象に深い思い入れを持ち、長年大切にしてきたならば、それらは全て「彼らのもの」として認めてもいいんじゃないだろうか。まあ、世間知らずに「起源」を主張するのは痛いけどさ。
スーパーヒーローはアメリカ人のセルフ・イメージなんじゃないかなと私は思っています。
これって、「戦闘美少女の精神分析」でも言われていたことだな。この本自体、内田さんの本で紹介されて読んだわけで、ネタ元だったらわざわざ晒したりはしないだろうけどね。同じ結論に至った人はいくらもいる、ってことなのかな。
アメリカのシステムは「ベネフィットを増やす」ことよりも「リスクをヘッジする」ことの方を優先しているわけです。人間をどう賢明で有徳に育てるかよりも、人間の愚かしさがもたらす現実の災厄をどうやって最小化するかを気遣っているわけで。
それも当然で、アメリカの建国の父たちは、「アメリカが今よりよい国になる」ための制度を整備することより、「アメリカが今より悪い国にならない」ための制度を整備することに腐心したからです。だって、アメリカは理想の国をすでに達成した状態からスタートしたんですから。それ以後、その理想国家をどう「改善するか」ということは問題になりません。
これは面白いなあ。アメリカが「理想国家」から始まったってのは聞いたことがあったけど、それが国のシステムに深く影響しているんだな。なるほどねえ。
アメリカの映画や漫画やテレビドラマを見て、そこでの子供の描かれ方がどうも「かわいくない」と感じるのは私だけでしょうか。アメリカの物語で描かれている子供は、みんな生意気で、どちらかというと邪悪なのです。
子供は親の自己実現を妨げない範囲でなら保護を受けることができるが、親の自己実現を妨害する場合や、親の生存を不利にする場合には排除される、というのが欧米の伝統的な子供観。
これも面白い。僕も、アメリカが描く子供は可愛くないと思ってたんだよね。物事の見方や文化ってのは、本当に国によって様々に異なるんだなあ。アメリカ人は子供が出来ても、普通に夫婦だけで食事に行ったり遊びに行ったりするってのを聞いたことがあったけれど、こういう理由があったのか。
やっぱり内田さんの本は面白いな。今までになかった視点を得られる。その道の研究者は既に辿り着いていた結論なのかもしれないけど、それを一般に知らせてくれる存在ってのは貴重だよな。