40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

ゲンロン1

 

「グルーヴ・トーン・アトモスフィア」(佐々木敦

世紀の跨ぎ目あたりを境として、表現とその伝播=流通にかかわる諸条件は、作家/作品から状況/環境(アーキテクチャ)へと重心を移動させた。それに伴い、広義の思想、批評と呼ばれる営み/試みの焦点も、それ以前とは大きく異なるスタンスを余儀なくされていった。

特権的固有名の時代は去り、無数の交換可能な名前の選択と配列のゲームが替わって登場した。特定の誰かを論じることが、ただそれだけの意味には留まらず、理論や思想と呼ばれ得る次元へと上昇してゆくこと自体甚だ困難になってしまった。

 

「ダークツーリズム入門 第8回」(井出明)

自身の大学受験の頃は、太平洋戦争に関する脚注として「アジアから欧米の勢力を排除したことは・・・植民地独立の条件を作り出し」という記述があったのだが、現行課程の教科書ではこの部分は消えている。

現地事情を踏まえずに、大東亜共栄圏を振りかざしてしまったばかりに、他国の歴史を変化させ、大きな迷惑をかけてしまっていることは確かであろう。東南アジアを歩いてみると、日本軍が進駐してヨーロッパ勢力を追い出したから、あの戦争には肯定すべきところがあるとはなかなか言い難いというのも見えてくる。

 

 

感想

2020年の9月末にゲンロン友の会に入会した。それによりゲンロン11をゲット。その後、友の会特典でゲンロン10もゲット。1~9も未読だったため、どうしようか迷ってたんだけど、年末にゲンロンショップにて半額セールが開催されたため、一気に購入。こうしてゲンロンが全て揃ったんで、一から読むことができるよ。巻をまたがってシリーズ化されている話も多いんで、ちょっと収まりが悪い感じがしてたんだよね。

 

表現において、作家/作品よりも状況/環境が重視されるようになっている。確かに、良い作品がそのまま評価されるわけではない。内容より、外部環境に大きく左右される。これはその通りだな。ネットの進展により、情報が溢れた。溢れすぎて、もう選別する暇がない。目に入ったものの範囲で楽しむことしか出来ない。手当たり次第、ただ受け入れるだけ。当然、質は落ちたものになる。

アリリタで増えた時間を使って、少しでもその流れに抗い、質を高める努力をしていきたい。出会えていない良質なもの、山程眠ってるんだろうなあ。勿体ない。

 

太平洋戦争がアジアにもたらしたものについて、教科書の記述から消えているってのは知らなかった。日本に都合のいい言説・理解も、世界に出れば現実に触れて更新することができる。世界一周の暁には、そういうものにも多く出会っていきたい。良い面でも悪い面でも。その全てを味わい、思考の一助とし、自分の一部としたい。その時が本当に楽しみだ。