40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

ゲンロン11

「芸術と宇宙技芸 第2回」(ユク・ホイ)

悲劇は紀元前5,6世紀のあいだのギリシア世界で誕生した。ほかの文明は一切悲劇を知ることがなかった。ソクラテス以前の哲学者たちはみな、感性の世界と理性でとらえた世界がますます一致しなくなるという事態に直面せざるをえなかった。この不一致が悲劇の時代を特徴づけているのである。

悲劇の時代とは、いくつもの対立や矛盾が出現した時代であり、そこで哲学的活動としてのロゴスが必要とされたのである。

 

「「映え」と写真の可能性」(大山顕

旅は写真によって大きな影響を受けてきた。旅が「発見」と「気づき」、ときには「成長」と結びつけられるようになって久しい。この考え方を促すものとして、自分自身の身体が見えないという写真の特性が一役買ったとぼくは思う。自分の中にないものを世界に見いだし、それを取り込み自分が変わる、ということが可能であるためには、自分自身が世界から独立した存在でなければならない。いわば自分が「見えない」からこそ「自分探し」ができる。

目的地に到達することだけではない本来の旅に対して写真ができることは、人を旅に向かわせることぐらいだと思う。目的が「映え」であろうと、出かけてしまうことに価値がある。一時のブームに終わることなく、みんな自撮りの「映え」写真を撮るために、うっかり旅に出てしまえばいい。

 

 

感想

「芸術と宇宙技芸」は話の内容が高度過ぎて理解できない部分も多いんだけど。ギリシア悲劇と哲学が生まれた理由は説得力があってとても面白い。なるほどねえ。

 

旅と写真についても、かなり面白い論考だった。大山さんはゲンロン叢書で「新写真論」という本も出している。興味が湧いたので是非読んでみたい。

 

このゲンロン11の読了をもって、ようやく既刊本を読み切った。ゲンロン1の発売が2015年末。そこから2020年9月発売のゲンロン11まで。5年間の知の結晶を、8ヶ月に凝縮して一気に読破した。内容が濃すぎて本当に大変だった。ここまで溜めるのは消化のためにも良くないね。今後はもっと短いスパンで哲学に触れていくようにしよう。

哲学という分野での雑誌のため、内容の幅はそれに沿ったものになるとはいえ。それでも自分の関心外のテーマに触れられ、興味が湧いたりもした。今後はそちらにも手を広げ、豊かな知を堪能していきたいね。
同じように、哲学以外の分野にも興味関心を伸ばしていきたい。

総括はまた改めて。来月届くゲンロン12も楽しみだ。