40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

ゲンロン9

ゲンロン9 第I期終刊号

ゲンロン9 第I期終刊号

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「パターンと対称性」(土居伸彰)

コントローラーやボタンをいじりつつ、攻略サイトを眺めつつ、楽しい気持ちを感じるなかで、知らず知らずのうちに、宇宙まで存在を拡張し、その過程のなかで自分とは違うなにかを触知し、自分自身と直結させることができる。ここにもそこにもいる異質なパターンを理解し、その身に刻み込む-ゲームプレイの体験には、ゲームを取り巻く環境には、そもそもそんな構造が内包されている。

 

「プレイングとメタゲーム」(松下哲也)

20世紀の美術は「言語ゲーム」となった。専門家たちが美学的、美術史的な言説を駆使して、より新奇性の高いコンセプトとレトリックを提示し合うのが、この言語ゲームの基本的なルールであった。そのため、当時の人々は、膨大な文献を読み込んで「現代美術の文脈」を把握するか、さもなくば意味不明なものとして美術を自身から遠ざけることしかできなかった。そもそも、作品のコンセプトや批評的言説の裏にある巨視的な戦略の差異の吟味が、20世紀以降の美術鑑賞の重要な楽しみの一つである。

今や美術を取り巻くプレイヤーたちのスタッツやヒートマップはSNS上に開示されており、メタゲーム的な「環境」の読みは容易になりつつある。「環境」の読みが作品の受容から切り離されることは、これからもないであろう。

 

 

感想

本巻では、ゲンロン8で特集された「ゲームの時代」の追加小特集が扱われている。ゲーム好きとしてはありがたい。面白い文章・考えにも触れられて満足。ゲームの可能性は広がっている。今後ともどっぷり浸かっていきたい。

 

ゲームと美術の関係・類似性についての論考も面白かった。僕が「現代美術」が良く分からない理由も理解できたし。情報が溢れた世界では、美術に限らず何でもメタ方向に突き進んでいくね。ハードルは高くなり、分断が進む。

ただ、美術がゲームを含む現代性を取り込んでいるのなら、古典的な美術よりも、現代美術により多くの情報や思想が埋め込まれており、気付きや感慨も大きなものになるんだろう。

SNSやらネットの力を活用することで、多少は読みやすくなったようだけど、やっぱりハードルは高い。でも、「ゲーム」として考えると面白そうな分野ではある。ゲーム好きとしてちょっと親近感が湧いた。そのうち本格的に取り組んでみたい。