40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

史上最強の哲学入門

第一ラウンド 真理の『真理』
1.プロタゴラス(紀元前485-410) 相対主義
2.ソクラテス(紀元前469-399) 無知の知 →無知を自覚してこそ「真理を知りたいと願う熱い気持ち」がわき起こる
3.デカルト(1596-1650) 方法的懐疑 →絶対に疑えない真理「我思う、ゆえに我あり」から哲学体系を作ろうとした
4.ヒューム(1711-1776) 懐疑論(イギリス経験論) →神も科学も、経験上の思い込みの絶対化
5.カント(1724-1804) 批判哲学 →経験の受け取り方には人類共通の一定の形式がある。「人間のとっての」真理。
6.ヘーゲル(1770-1831) 弁証法 →対立する考え・真理をぶつけることで、より優れた真理が得られる
7.キルケゴール(1813-1855) 実存主義 →「人類にとって」「普遍的な」真理よりも、「今日のための」「自分の」真理
8.サルトル(1905-1980) 究極の真理を待つのではなく、自分から積極的に意味を・真理の発展を求めていこう
9.レヴィ=ストロース(1908-2009) 構造主義 →目指すべき唯一の文化、究極の社会なんて無い。傲慢な思い込み。
10.デューイ(1859-1952) プラグマティズム実用主義) →本質を考えても意味がない。有用・実用的なものが真理。
11.デリダ(1930-2004) 脱構築 →共通の真理は得られない。各人が自分の真理を構築していけばいい。
12.レヴィナス(1906-1995) 他者論 →「誰にも否定されない絶対的な真理」を作り出すことは、不可能。

 

感想

著者の飲茶さんの存在は、シラスで知った。その後、「岡田ゼミ」で本書が紹介され興味を持った。シラスと岡田ゼミが繋がるなんて面白い。本書の紹介も面白かった。登場人物が多数いて錯綜している言論空間を、「刃牙」成分でもって整理するというアイデア。馬鹿っぽくて、でもだからこそ分かりやすい。

様々な主張をしている哲学者たちを、主題ごとに「ラウンド」でまとめ、時系列に沿って思想の変遷・発展を紹介してくれる。一人一人の主張には何度も触れたことがあったけど、こうしてまとめてくれると分かりやすいね。特に第一ラウンド(真理の『真理』)が興味深かった。

相対主義からは何も生まれないと発展していった思想・哲学が、その行き着くところでは結局相対主義に至る、という展開。確定できない、自分とは異なる存在がいることを肯定的に描いてはいるけれど、なんか徒労感は拭えない。まあ、仕方ないね。僕も基本は共感でき楽しめる小さなコミュニティに浸り、たまには外に目を向けて新たな楽しみを模索する、というスタイルでやっていきたい。

 

第二ラウンド(国家の『真理』)で説明された資本主義社会の宿命の話は面白かった。僕も働いていた時、大した意味のない開発に携わることが苦痛だったからな。あれも、社会を維持するために必要なんだろうけど。それは、別の人にやっていただきたい。僕は、小さくとも意味がある活動がしたかったし、それが出来ないならばさっさとおさらばするのみ。
この安楽な生活を、いつまで続けていけるか。みんながそれに続くと、維持できないのは明らか。崩壊する前に楽しみ尽くすのみ。まあ、大多数が貯金なし生活をしている世の中、なかなかアリリタを達成するのは難しいだろうけどね。

 

第四ラウンド(存在の『真理』)の、価値観によって「存在」も変わってくるという指摘。これはまさに、今SNSで起きていることだな。自分の枠内のみで語り、それが枠外から発見されて炎上する、という構図。フェミニズムLGBTの暴走なんかも、自分の世界しか見えてないんだろうなあ。理論は分かったけど、それで現在弊害が生じてしまっているのも事実。今後、この問題が解決される道筋はあるんだろうか。相対主義のように、回りまわった末の諦観、に至ることが無いといいけど。

読みやすかったし、なかなか得るところもある、楽しい読書となった。