つながり−社会的ネットワークの驚くべき力−
- 作者: ニコラス・A・クリスタキス,ジェイムズ・H・ファウラー,鬼澤忍
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/07/22
- メディア: 単行本
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実験によって、あらゆる人が平均して「六次の隔たり」によって相互につながっていることが示された。もっとも、だからといって、それらの人びとすべてに影響を及ぼせるわけではない。社会的な距離が問題となるのだ。研究から、社会的ネットワークにおける影響の広がりは、いわば「三次の影響のルール」に従うことがわかっている。
私たち一人ひとりは特定の長期的な傾向を維持することが多い。私たちは個人的な幸福の設定値を持っており、それは簡単には変わらないようなのだ。最も信頼できる推定によると、長期的な幸福の50%は遺伝的な設定値に、10%は環境に、40%はその人がどう考え、何をしようとするかに依存しているという。生活のなかの経験が人の気分をある期間にわたって変えるのは言うまでもないが、ほとんどの場合、こうした変化は一時的なものなのだ。
結婚が当事者にとってよいことなのは確かだが、その恩恵は男女によって異なるのだ。結婚生活によって男性の寿命は7年延び、女性の寿命は2年延びることが統計分析からわかる。ほとんどの医療よりも大きな恩恵があるのだ。結婚における恩恵に男女間で差が出るのは、女性のほうが配偶者を社会につなげておく能力が高いためなのは間違いないようだ。
感想
クーリエジャポン8月号の「幸せも肥満も感染する!人間関係でわかる、あなたの運命」って記事が面白かったんで、その大元である本書を読んでみた。期待通り、かなり面白かった。「友人の友人の友人」からも影響を受けているってのは、面白いな。
社会的ネットワークは、その中を流れるあらゆることを増幅する。また、ネットワークの中で中心近くに存在している人物ほど、その影響を強く受ける。影響には良い影響もあれば悪い影響もあるが、人間がネットワークを構築するのは悪い影響よりも良い影響の方が大きいから。だからネットワークに深く組み込まれている人間のほうがより幸福に生きることができる。影響の伝わり方とか、ネットワークの構造の違いによる影響の違いとか、実験に裏づけられた証拠に基づきはっきりと提示してくれて、読んでいて爽快。まあ、僕は考えるまでもなくネットワークの周辺に位置している人間なんだけどね。
本論とはちょっと外れるんだけど、「長期的な幸福の50%は遺伝的な設定値に、10%は環境に、40%はその人がどう考え、何をしようとするかに依存している」ってのは興味深い。僕が大概の日々において幸福でいられるのは、遺伝的に幸福を感じやすい人間だからなのかな。おまけに、思考においてもそうなるように行動しているのならば、これから先環境がどのように変化していったとしても、変わらずに幸福で居続けられるってことだよな。これはありがたいことだ。何だかお墨付きをもらえたようで嬉しい。ネットワークの恩恵をもっと受けられるようになればさらにいいよな。結婚によってそれが改善されるというのなら、やっぱりそれを目指していきたいところだ。
群集の知恵に関する考察も面白い。どういう場合に賢い判断ができ、どういう場合にできないのか。覚えておけば有効に活用できそうだ。でもこれが正しいのならば、話し合いってのはあんまり上手いことではないのか?愚かな決定にならないよう、場を適切に設定することが大事そうだ。なるほどねえ。
宗教の効用をネットワークから考えるのも興味深い。確かに、信者同士は神を介して2次の友人になるわけだからな。強固な信頼関係が築かれるのも分かる。物事を異なった視点から眺めるのって面白いよなあ。今回この本を読んだのはクーリエジャポンを通してだったが、これからも面白そうなことにはどんどん突っ込んでいって、掘り下げ、広げていきたい。