日本人へ 国家と歴史篇
- 作者: 塩野七生
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/06/17
- メディア: 新書
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出版界のリスク回避の志向を知って、それならば出版される本の数も減りますね、と言う人がいたとすれば、その人への答えはノーである。それどころか、ますます増えるだろう。ただし、短期間にモトが取れるものだけが。そして、それらは次の一色に染まっていくだろう。つまり、読む愉しみや知的満足を与えてくれる本よりも、読めば不安を解決してくれると思える本の一色に。なぜなら人を本屋に走らせるのは、愉しみへの期待よりも、不安解消への期待のほうであるのだから。たとえそれを読んでも、真の解決にはまったく役立たなかったとしても。
感想
例によって塩野さんの本。9月に「リーダー編」を読んだけど、その第二弾がこの本。塩野さんらしく自分の意見を自信を持って打ち出しているのが小気味いいなあ。どんな意見でもそこから何を汲み取るのかは受け取り手次第なんだから、こうやって思っていることはストレートに出すことが大事だよな。変に迎合して中途半端でどっちつかずの意見を出されても、参考になりやしない。凡人はそうもいかないからな。特に対面では。
「ローマの皇帝達で内閣を作るとしたら?」っていう項は面白かった。こうやって得た知識を使って想像に遊ぶってのはいいよな。知識を縦横無尽に活用できる人間になりたいもんだ。
出版される本の傾向についての意見はさすがだなあ。確かにその通り。僕も不安解消のためだけの安易な読書は避け、本当に意味のある、糧となる読書を求めていきたい。指摘されているような読書は避けているつもりだけど、不安のうちに知らず知らずのうちに求めていないとも限らないからな。
あと、塩野さんの家はローマにある「アラ・パチス(平和の祭壇)」から2,3分の距離にあるそうだ。僕も去年ローマに行ったとき、これは見に行った。そこからすごく近いところに住んでたのか。知らなかった。とはいえ、住所が公開されているわけでもないし、家にいるとも限らないし、塩野さんに会えるわけじゃないんだけどね。