「おじさん」的思考
- 作者: 内田樹
- 出版社/メーカー: 晶文社
- 発売日: 2002/04/06
- メディア: 単行本
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「本当の自分を探す」、「自己実現」というような修辞は、その背後に、場面ごとにばらばらである自分を総括する中枢的な自我がなければならない、という予断を隠している。「中枢的で単一の自我」を理想とするイデオロギーは、「カルト」や「マニア」への社会の細分化、原理主義や偏狭な部族主義と構造的には同型である。社会集団は「同質的で、単一で、ピュアであえるべきだ」という危険なイデオロギーを声高に批判する人々がなぜ「自我は同質的で、単一で、ピュアであるべきだ」という近代の自我論を放置し、しばしば擁護する側にまわるのか、私にはうまく理解できない。
感想
前に読んだ内田さんの「期間限定の思想」って本が面白かったんで、その前著に当たるこの本を読んでみた。内容が被っている面も見られたが、「期間限定の思想」で取り上げられていた論点が深く考察されている部分もあり、楽しんで読むことができた。
具体的には、『「護憲」派とは違う憲法九条擁護論』と『「私」は私の多重人格のひとつにすぎない』の項。すごく納得できたんで、自分の考え方として取り入れたいと思う。
この本はブログに書いていたことを抽出してまとめたものなんだけど、これだけ深くて多岐にわたることを論じれるのって凄いよなあ。やっぱり普段から考えてるんだろうな。それが職業柄当然ってのもあるだろうけど。僕もそこまでは行かないにしても、色々なことを論じられるような人間になりたいなあ。