ゴーマニズム宣言SPECIAL新天皇論
- 作者: 小林よしのり
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/12/15
- メディア: 単行本
- 購入: 4人 クリック: 97回
- この商品を含むブログ (17件) を見る
旧皇族は、既に60年近く一般国民として過ごしており、また、今上天皇との共通の祖先は約600年前の室町時代までさかのぼる遠い血筋の方々である。北朝第3代、崇光天皇の子、栄仁親王までさかのぼらないと、今上陛下とつながらないのだ!今上天皇とは20数世代、40数親等もはなれている。
有識者会議の報告書「国民が、象徴としての天皇に期待するものは、自然な血統に加え、皇位とともに伝えられてきた古来の伝統や、現行憲法下の60年近くの間に築かれてきた象徴天皇としての在り方を含め、皇室の文化や皇族としての心構えが確実に受け継がれていくことであろう。このような観点から皇位継承資格者の在り方を考えた場合、今日、重要な意味を持つのは、男女の別や男系・女系の別ではなく、むしろ、皇族として生まれたことや皇室の中で成長されたことであると考えられる。」
「万策尽きたら女系容認」とは、「万策尽きたら正統性のない女系でもいい。何だっていいや!」・・・という意味になる。女系天皇は、万策尽きた末の「やけっぱち天皇」か?こんな不敬な話があるか!
感想
女系天皇容認派の小林よしのりさんが、自身の立場の正当性を主張した本。前に男系絶対派の竹田 恒泰さんの「語られなかった皇族たちの真実」って本を読み、男系絶対派の主張も分かるな、と思っていた。でもまたこうして小林さんの主張を聞くと、女系容認派の主張も分かる。両者の意見にコロコロ動かされるのは情けないんだけど。でも結局、両者とも自身の主張に都合の良い情報しか出していないんじゃないか?だから色々な事実の前に右往左往してしまうわけで。一度、両者に真っ向から対決して欲しいもんだ。
僕が男系絶対派の主張で説得力が強いと思ったのは、三度の皇統断絶の危機において、天皇の娘に位を継承させず、何親等も離れた男系男子に継承させたってこと。第25代武烈天皇から第26代継体天皇への10親等離れた継承について小林さんは、当時はシナの影響で男性優位の時代だったからだと言う。世間は女性が上に立つことを受け入れなかった。だから当時は男系女子ですら即位していない、と。もしこれが理由ならば、なるほど納得できるものだ。でもこれは、第102代から103代への継承の時も、第118代から119代への継承の時も当てはまるのか?その答えも示してもらいたい。
逆に、「天皇は男系で続かないと皇統の正当性が失われる」っていう男系絶対派の主張は、僕は怪しいと思う。小林さんが指摘したように、女性天皇から娘への継承、女性天皇から息子への継承の例はある。確かに、系譜上で考えれば全ての天皇は男系と言えるのかもしれない。でも過去の全ての継承において、「男系男子だから」という理由が踏襲されていたとは思えない。絶対の条件ではなかったんだろうと思う。
天皇の継承に当たって基準となったのは、「国民または対抗勢力が、その人物に納得できるか・最も受け入れられる人物か」だったんじゃないか?もともと、天皇は男系でも女系でも良かった。ただ、男尊女卑が一般的だった世の中だったからこそ、男系で続いていただけ。世の中の状況が整えば、男系だろうが女系だろうが構わないのでは?そして今の世の中、女系女子が天皇になったとしても、大多数の国民は受け入れるだろうと思う。600年も前に別れた血筋の男系男子と、今の皇室に残っている女性、国民がどちらを選ぶかというと、やっぱり後者だろう。そして、後者のほうが国民に受け入れられるという事実こそ、天皇選定の際に重視すべきことだろう。
というわけで、僕の最終的な結論としては、「女系天皇容認」とする。まあ、男系絶対派がまた新事実や反証を掲げてくるのなら、きちんと考慮し、場合によっては乗り換えることもやぶさかではないけど。