40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

競争の作法−いかに働き、投資するか−

競争の作法 いかに働き、投資するか (ちくま新書)

競争の作法 いかに働き、投資するか (ちくま新書)

少しだけ長い目で、冷静に、起きてきたことをみつめれば、人々に幸福をもたらさなかったGDPの拡大など、失われても大したことではないのに、リーマン・ショックのせいで「あるべき豊かさ」が失われたと焦燥感にかられてしまう。さしたる根拠もなく「GDPギャップ」の大きさに焦燥感をつのらせた評論家は、時々、とんでもなく素っ頓狂な議論を展開する。


本書のメッセージは、三つに集約できると思う。第一は、一人一人が真正面から競争と向き合っていくことである。第二は、株主や地主など、持てる者が当然の責任を果たしていくことである。第三は、非効率な生産現場に塩漬けされていた労働や資本を解き放ち、人々の豊かな幸福に結びつく活動に充てていくことである。


失われた10年」は、これまでのシキタリやありきたりの屁理屈に必死にしがみついて「正しく堕ちる道を堕ちきること」ができなかった10年間でなかっただろうか。追いつめられたぎりぎりのところで己の虎を見つめ、それぞれの美学と道徳をあみだし、醜さを食い止め、美しさを保ち続け、己を律しなければならないのでないだろうか。
資本主義社会の競争原理は、社会を超えたところに立っている人間が善悪について考えた倫理によって葬り去るのではなく、社会の中にあって追いつめられた人間があみだした美学と道徳によって守りきるべきなのではないだろうか。
一人一人が真摯に競争に向き合うときにこそ、真に人間性が培われ、豊かな幸福を実感できる社会に近づけるのでないかと思っている。


感想
失われた10年」や「戦後最長の景気回復」について、その原因や真実の姿についてデータを基に論じている。本のタイトルとは内容がちょっとずれているように感じたが、別にタイトル買い(借り?)したわけでもないので気にしない。なかなか興味深い話だったしね。
新聞報道の悲観的な論調について、「短期間の変化ばかりに気をとられすぎていて、大局観についてかえって間違った印象を人々に与えていないであろうか。」ってのはその通りだと思った。マスコミは悲劇を演出しすぎ。その影響力を活かし、もっと人々の痛みを軽減することに貢献すべきだろう。そうやって悪い方向に煽った方が注目度も高くなり売り上げもいいのかもしれないが、人々を間違った方向に誘導してるよな。読者側がそれを求めるから供給側もそうなるんだろうけど。そろそろ読者側も、自分たちの不利益を認識すべきだろう。
最近は連日、超円高とか言って騒がれているが、今までが円安すぎたって面もあるんじゃないだろうか。過去が正しい・正常だって前提を置くから、それに反する今は間違っている・異常だってなる。でも実際には、そんな前提を安易に置けるものじゃないだろう。もっと冷静になって、過去や現在を見つめないといけない。もしかしたら今までが異常だったのかもしれない。そうだとしたら、異常が正されたってだけの話なんだから。
一応最後には、本書のタイトルにあるように、社会や人々が目指していくべき方向を提言している。でも、こうやって人々に訴えかけるだけでは、何も変わらないんだろうなあ。もっとどん底まで落ちて、みんなが目覚めるか。法整備によって強制的に正すか。と言っても、政治家のリーダーシップなんかには期待できないから、法整備なんて進まないだろう。結局は前者になるんだろうな。著者も言っているように、「堕ちるところまで堕ちる」。それしかないんだろうな。
「一人一人が」とは言っているが、個人の行動で何かを変えられるという話でもないような。でもまあ、マクロで日本経済の姿を捉えることができ、勉強になった。