ゲンロン2
「ダークツーリズム入門 第9回」(井出明)
遺構が存在し続けることは、記憶の承継にとって非常に重要な事であり、たとえそのレジティマシーが観光によって変容していたとしても、建造物としての価値は大きい。そしてそれは、時代とともに復活する可能性がある。
また、観光客に見せる民俗芸能も、断絶する前に観光によって生き延びることに成功した場合、それは、元の正当性に立ち返る機会を潜在的に持ちうる。
観光は確かにモノの本質を歪めることもあるが、同時にその対象の命をつなぐこともあり、将来的には本質への回帰をもたらす可能性をも含んでいる。文化人類学や民俗学の一部に、観光という概念を受け入れたがらない向きはあるものの、観光が持つさまざまなポテンシャルを排除すべきではないであろう。
感想
ゲンロン誌には、様々な論者による様々な内容の記事が掲載されている。単行本とは違って自分に関心のない記事・内容も含むわけで、そういうところから自分の関心興味を広げていきたい。
観光についての文章は面白かった。どんな形でも継続して後に繋げることで、未来において再評価され再興される可能性が残る。見世物化することへの批判はその通りだけど、そうやってばっさり切ることだけが本当に正しいとは限らない。その時・その場だけの判断ではなく、時間性も考慮した多角的な検討を持って、色々な判断を下していきたい。