40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

国銅

感想

すごいものを読んだ。本の分厚さにちょっと気後れを感じていたけど、読み始めたら一気に引き込まれた。これは勢古さんの本「定年後に読みたい文庫100冊」でお勧めされていた本。

小説を読む気力がなくなってきたこの頃だけど、それが歴史小説には発揮されないことが確認出来て嬉しい。やっぱり架空のものではなく、いくらかでもそこに真があり、時代背景含めて知識とすることができる、って点が大きいのかな。勢古さんが言っていたのは本当だったんだ!名前だけは知っていても業績含め関連知識に乏しい人物や地域は多いんで、今後はそういうのも拾っていって読書生活を楽しんでいきたい。

 

小説とはいえ、当時の庶民の生活状況が実感できるのが良い。大仏の作り方も面白かった。完全なフィクションだと、その物語の楽しさ以外には残らないけど、こういう事実を下敷きにした本だと知識として糧になるのが良い。SFみたいに舞台設定を一から理解する必要もないし。

 

でもこの物語の主人公達の置かれる状況は厳しい。課された労役が、命を懸けて取り組まなくてはならないものなんだから。結末も物悲しい。生活の労苦だけが庶民生活の全てではないだろうけど、それでも大半を占めたんだろう。彼らのまた別の面の生き方・楽しみも見てみたい。
今の恵まれた時代との格差を強く感じた。現代人は、当時の貴族、いや天皇よりも上等な生活をしているんだからね。自由に生き、自由に移動し、望むものを手に入れられる。技術や制度の進展ぶりは素晴らしい。本当、今に生きられる幸福を感じるよ。

 

743年、大仏造立の詔。歴史を学ぶ際には、このたった一行で終わってしまう出来事。その発令により、実際にどのようなことが起こったのかはなかなか想像しない。寄進者42万余人、作業者のべ約218万人。詔から9年後に開眼会が行われ、その後も金箔塗や台座の彫込みは続けられた。そんな大事業。作業者のうち、どれだけの人が亡くなったのか。どれだけの人が、地元に帰れたのか。こんなことがまかり通っていた時代があったんだからな。

 

本書を読んだことで、新たな気持ちで大仏を見ることが出来そうだ。日本一周の折には絶対に立ち寄ろう。まあ、大仏は火災に2度遭っていて、今残っている大部分は江戸時代に補修されたものなんだけど。台座の裏の方は天平時代当時のものが多く残っているみたい。
あと、奈良登りの現場である、山口県の長登銅山にも行ってみよう。こうしてまた、新たに思い入れを作ることができて満足。著者の別の作品も読んでいきたい。