40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

反穀物の人類史

ほぼすべての古典的国家が雑穀を含めた穀物を基礎としていたということは、まさに衝撃的だ。歴史はキャッサバ国家を記録していないし、イモ国家もない。これはわたしの推測だが、集中的な生産、税額査定、収奪、地籍調査、保存、配給のすべてに適したものは穀物だけだったのだろう。適切な土壌であれば、コムギは臣民を高密度に集中させるのに必要な農業生態を提供してくれる。

穀物は目視、分割、査定、貯蔵、運搬、そして「分配」ができる。穀物の利点はなによりも収奪の容易さと効率にある。

 

文字が発明されるまでの世界は「暗黒」で、文字が発明されたらすべての社会がそれを採用したかのように考えるのは間違いだ。最初の文字も、国家建設と人口集中、そして測定から生まれたものだった。ほかの状況では応用が利かない。文字は国家以外では抵抗された、それは国家と税とのあいだの消すに消せない結びつきがあったからで、耕作が重労働とのつながりを消せずに長らく抵抗されたのと同じだとしている。

崩壊のエピソードに続く時代は、たいてい「暗黒時代」とよばれるようになる。この語はたいていプロパガンダの一形式で、中央集権的な王朝が自らの達成を際立たせるために、それまでの不統一と分散に当てはめたものだ。文明の光が消えたのと同じだと理解するだけの正当な理由はないと思われる。

 

 

感想

「スケザネ図書館」っていうyoutubeのチャンネルにゲストで登場したスゴ本のDainさんが紹介した本。

狩猟採集民から農耕民への移行が、個々人にとっては向上・進歩ではなく退化・抑圧でしかなかった。それについては他の本で既に得ていた知識だったため、新たに得るものがあるか半信半疑だった。まあ、知識の補充・更新になればいいかなと思って読んでみたんだけど。なかなか面白い知識が得られ、知的好奇心を満足させる読書となった。

 

穀物こそが、支配層にとって収奪に都合がいい作物であるという説明は面白い。だからこそ、日本においても蝦夷討伐において現地民の農民化を目指したんだな。文明化の強制というより、支配下に取り込み、収獲から税を徴収するための取り組み。その活動の原理を知ることが出来、腑に落ちた。

定住と国家建設が一直線に進んだわけでは無い、というのも新しい知見。国家は不安定な存在で、何度も建設・崩壊を繰り返した。説明されてみれば、確かに、と納得できる。これも、そのまま無批判に受け入れていたなあ。

文明が崩壊した後の「暗黒時代」という表現についても再考させられた。残るものが少ないだけで、その時代でも文化は蓄積し、後の発展の土台となったわけで。レッテル貼りをそのまま受け入れるのではなく、その裏にあるもの・意味をちゃんと考えていきたい。