40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

芸術起業論

欧米の芸術の世界は、確固たる不文律が存在しており、ガチガチに整備されております。そのルールに沿わない作品は「評価の対象外」となり、芸術とは受けとめられません。知的な「しかけ」や「ゲーム」を楽しむというのが、芸術に対する基本的な姿勢なのです。欧米で芸術作品を制作する上での不文律は、「作品を通して世界芸術史での文脈を作ること」です。

 

日本では好き嫌いで芸術作品を見る人が大半ですが、これは危険な態度です。主観だけでは、わかりやすいもののみを評価することになってしまいます。それは時代の気分やうわさ等、不確定なものによって揺れ動く状態での判断になるからです。客観で歴史を作ってゆく欧米の文脈からはかけ離れてゆきます。欧米の美術の歴史や文脈を知らないのは、スポーツのルールを知らずにその競技を見て「つまらない」とのたまうことと同じなんです。

 

ジャポニズムも結果的には写楽北斎をハイアートの文脈でカテゴライズしてくれたのはフランス人やイギリス人であり、日本人が写楽北斎のステイタスを作ったわけではありません。浮世絵に力があったというより欧米の作ってくれた文脈に踊らされたとも言えるのです。

 

感想

本「読書会入門」にて、課題本となった本の一覧で紹介された本。アリリタし、時間がある身だし、今まで手を付けられなかった分野にも興味の目を模索していきたい。芸術・美術ってのは、その対象となりうる一大分野。世界で評価されている日本の芸術家が、芸術について、そこで身を立てる方法論について語った本書。かなり赤裸々に本音で語っており、多くの収穫が得られた読書となった。

 

今の芸術界のルールについて。それを突き詰め、それに乗る形で表現し、狙い通り評価された著者は凄いね。成功するべくして成功した人物。たまたま芸術に活路を見いだしたからそこで成功したけど、彼ならどの分野でも成功したんだろうなあ。

株式投資と芸術の世界の類似性の説明には深く納得させられた。一握りの天才だけでは商売が成り立たない。それを発展・隆盛させるためには、ある種のルール付けによって幻想・付加価値を乗せ、ビジネスを回し続ける必要がある。今、NFTによってデジタルデータに付加価値を付けて回しているのも、同じ原理なんだな。あのアホらしい商売には疑問しかなかったんだけど、すごく納得できた。

 

そうして芸術家の原理が何となく分かった今。結論として、現代芸術には手を出さなくて良さそうだな、と。そこに普遍的価値なんて無く、スポーツと同じく、ルールの中で楽しくやっているだけ。そこに文化や高尚さを感じてわざわざ参入するようなものではない。それは鴨になるだけ。スポーツを見るのと同じような意味で、芸術に触れるのが楽しいのならやる価値はあるけれど。実際、ゲームとしての奥の深さはかなりのものなんだろうけど。人それぞれの感性に左右されない、明確な基準ってのはあってくれたほうが助かるし。でも現状、特に関心もない分野なんだから、わざわざお金・時間・情熱を賭ける必要もない、と。芸術のカラクリが分かり、手を出さなくてもいい理由付けも得られ、すっきりした気分だ。

もちろん、著者も言うように一握りの天才はいるようだし、世界遺産に指定されたスポットを訪問したい欲求のようなミーハーな気持ちも持っている。世間で評価されているなら、それを見ることで満足感も得られるだろう。だから、観光旅行で美術館や博物館に行くような機会があるのなら、程々には手を出すつもり。その際は、現代美術よりは古典美術をメインに。そんな方針で行くことにしよう。

 

美術はまあいいとして。「興味を追求する」「楽しさを感じた理由を追求する」という、著者の方法論は僕も活用していきたい。そこが分かれば、効率的に楽しい生活を送っていけるだろうからな。今、過去の総まとめをしているんだけど、ある程度整った段階で、より深い内面を探っていきたい。