40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

新訳 茶の本

茶人こそは本物のユーモアの達人。茶にはワインのような傲慢さも、コーヒーのような自意識も、ココアのような間の抜けた幼稚さもない。

 

天心は、西洋とくに近代西洋世界では、物事を分類、分別、個別化する文化が基本となってきたのに対し、東洋とくに伝統東洋世界では、不二一元思想(すべての存在は、外見上は異なっていても、本質においてはひとつであるという古代インドに発する思想)を基礎として、物事には多様な意味がありうることを重視してきたのであり、それを集約するのが茶なのだというのである。それ故に、この茶というささやかな飲み物を通して東洋文明の広大な可能性を垣間見ることができることになる。

 

老荘思想道教、禅は、それぞれが生まれてきた時代も、状況も、内容も同じではないが、大筋においては、ひとつの根本思想の流れをひきついで、東洋人の生き方の根幹を規定してきたと天心はみなす。その要点はふたつある。ひとつは、「道」の解釈に集約されるように、この世の一切は相対的な存在であって、絶対的に固定されているものなどない、すべては絶えず移り変わっているという考え方であり、この考え方に立つなら、儒教が重視するような社会秩序などというものも無意味になり、そんな世俗の秩序の外で、自然とともに自由気ままに生きることこそ望ましい生き方となる。
そして、もう一つの要点は、こうして絶えず移り変わっていく世界に生きているからといって、正統仏教のように無常厭世観にとらわれるのではなく、逆に、現在、目の前の現実をかけがえのないものとして十全に受け入れ、味わえという教えで、これは、とりわけ禅において徹底され、茶の基礎となったというのである。

 

 

感想

禅とか茶については去年からの関心事だし、「岡倉天心」という人名は聞き覚えがあってもその業績・人となりについてはこれまで触れたことがなかったため、興味を持って読んでみた。結果、かなり考えさせられたし、収獲のある読書となった。

 

西洋は分類・分別・個別化する文化で、東洋は統合・多様性を尊重する文化ってのは分かるなあ。僕も西洋に慣らされて分別・分類するのが好きだし、個人主義だし、それらにかなり染まっているよなあ。何事も、極端すぎるのは良くない。東洋の、統合・調和する考え方も今後は意識していくべきなんだろうなあ。茶を飲みながら、それをよくよく思い返す機会としていくのもいいかもね。

 

自然が厳しい北方は人間も厳格で規則正しくなり、実り豊かな南方は自由・個人主義的な考え方が育つ。環境・自然が及ぼす人間への影響ってのは本当に大きい。良い悪いではなく、人間はそれに容易に影響され、流され、規定されてしまっている。自動的にそうなっている自分を自覚し、自分が望む方向に意識して立場を定めていきたい。
もう群れる必要のない僕は、今後、南方の老荘思想に親しんでいきたいよね。

 

この世に絶対は無いと思っているし、だからといって絶望せず、自由に生きていこうと思っている。この立場って、岡倉天心が目指した位置と全く同じなんだな。老荘思想道教、禅。そして茶。今後の人生、それらを方針の一つとしていこうかね。まずはもう少し、それらの考え方を知っていきたい。